山陰沖の歌の語り(25)

第4章、歌の復権

 第4節、延喜歌壇の隆盛

 小野篁古今和歌集の第一期、いわゆる「よみびと知らず」の時代の作者である。その初期和風(やまとふう)の表現は、さらに六歌仙の時代を経て、紀貫之に代表される延喜歌壇の隆盛に繋がる。

      和歌にすぐれて めでたきは 人丸 赤人 小野小町
        躬恒 貫之 壬生忠岑 遍昭 道命 和泉式部   (梁塵秘抄

 

 和歌確立に果たした小野一族の役割は実に大きい。だが歌の心がさらに芸術的に高められるのは、時代を経て、政権が公家方から武家方へと大きく移行してからである。
 言葉とは所詮は枝葉で、心こそが全ての種(たね)と、紀貫之は既に語っていた。心こそが歌の真髄であると。世の歌詠みたちは、その心を研ぎ澄ます修行を、繰り返し丹念に行っていた。だが彼らが真実、自らの心に向き合うのは、深い人生の悲哀を経験してからである。源平の争乱を経験し、深い傷痕を負ってからである。それが真実の深い言語情調の世界へ、彼らを誘っていった。