山陰沖の歌の語り(27)

第5章、後鳥羽上皇隠岐

 第2節、新古今和歌集の成立

 歌道に深く研鑽を積む後鳥羽は、藤原定家ら和歌所の六人に命じ、古今の名歌秀歌を選別させた。この提出された選歌を、後鳥羽自身さらに精選し和歌所へと差し戻した。そして部類分けや配列の作業を経て、元久二年(1205)に歌集として披露した。新古今和歌集の成立である。

 歌集は技巧を重んじ、耽美的な傾向を持つ約二千首を収録した。その余情妖艶の美は、辛辣な正岡子規にさえ「絢爛を競いたる新古今」と言わしめるほど、華麗、耽溺、豊穣の世界を展開した。歌集にある後鳥羽の歌を幾つか、以下に示しておこう。典雅な帝王ぶりの歌である。

           ほのぼのと 春こそ空に 来にけらし 天の香具山 かすみたなびく      (2)

   み吉野の 高嶺の桜 散りにけり 嵐も白き 春のあけぼの                  (133)

   ほととぎす 雲井のよそに すぎぬなり 晴れぬおもひの 五月雨の頃   (236)

      山里の 峰のあま雲 とだえして 夕べ涼しき まきの下露        (279)

   鈴鹿河 ふかき木の葉に 日かずへて 山田の原の 時雨をぞ聞く      (526)