山陰沖の歌の語り(58)

第7章、歌の分化

 第4節、五本の祭

 隠岐島前、浦郷の日吉神社にも十方拝礼(しゅうはいら)の祭儀は残る。この日吉神社には、中世期の芸能、古様の神事「五本の祭」が遺されている。「五本の祭」とは五つの祭礼で、十方拝礼とは、そのうちの一つである。

   五本の祭

    一、真言(神扉を開き大般若経の転読)
    二、神楽(蓮華舞、獅子舞、神楽舞)
    三、庭の舞(庭で舞われる古様の舞)
    四、神の相撲(子供二人で捧げる相撲所作)
    五、十方拝礼(田楽の舞踊)

 このうち真言と神楽は、いつしか中止され、もう祭儀としては廃絶している。だが他の三つの祭儀(庭の舞、神の相撲、十方拝礼)は、今なお引き続き執り行われている。五本の祭には、これを讃える歌も残る。

 

   此の宮の 五本の祭 する人は
     壽(いのち)も長く 千代の世までも
             さんよ さんよ
                      五本の祭(隠岐国浦郷 日吉神社

 

 「さんよ さんよ」とは「賛与 賛与」なのか「参与 参与」なのか、不明ではあるが、この祭礼に参加せよ、共に祝おうという、囃子言葉であるに違いない。