山陰沖の歌の語り(63)

第7章、歌の分化

 第9節、皆一の踊り


   皆一様に お並びやれ 皆一様に お並びやれ
   若狭の浜より 船に乗り 越前岬に 仕えたり
            商い踊りを ひと踊り
   越前岬も 押し出して 加賀の港に 仕えたり
            商い踊りを ひと踊り ひと踊り
   加賀の港を 押し出して 寺家(じかん)の市へと 仕えたり
            商い踊りを ひと踊り ひと踊り
   寺家の市も 押し出して 夷(えびす)が島へと 仕えたり
            商い踊りを ひと踊り ひと踊り
   夷が島では 夷殿と 商い元では 何々と
   唐(から)の衣や 唐糸(からいと)や
   沈香(じん)や麝香(じゃこう)や 鷹(たか)の羽(は)や
            商い踊りを ひと踊り
   万(よろず)の商い 仕廻りて いざ戻ろうよ 我が国へ
            商い踊りは 是(これ)まで揃う 是まで揃う
                      豊年踊り(若狭国内浦、山中踊り) 

 

 若狭から東へ向かえば、越前岬、そして加賀、寺家(じげ)のある能登へと達する。さらにその先は、遙かな蝦夷の島である。若狭から西ならば、丹後の経ヶ岬を越え、因幡の賀露(かろ)の浜へ、大山を望む山陰沖へと向かう。隠岐は直ぐそこにある。海の商人たちは、日本海を東に西に、大いに駆け巡っていた。